CASE

テーブルマーク株式会社

事業成長を牽引する人材を育む ――激変の時代に求められる人事戦略とは

FMHRさんは同じチームの仲間、という感覚でいます

人事総務部 人事戦略チーム チームリーダー

大渕 渉

受講者が研修を研修として捉えないようになってきました

人事総務部 人事戦略チーム

満田 依代

冷凍うどんや冷凍お好み焼(ごっつ旨い)でお馴染みの「テーブルマーク」も、近年は事業環境の激変にさらされている。これからの時代に求められる人材をどう定義し、どう育てるのか――。同社の人事戦略チームと、常に伴走してきたコンサルタントが、全社人財像の策定から研修の実施まで各フェーズのポイントを語り合った。

求める人材を「全社人財像」として明文化。人事戦略の起点に

FMHR 山田 まずは御社の事業や理念について、あらためて教えてください。

大渕 テーブルマークは、うどんをはじめとする冷凍食品や、パックご飯などの常温食品などを企画製造販売している食品メーカーで、「一番大切な人に食べてもらいたい」という想いのもとに事業を展開しています。近年は食の価値が再定義され、おいしさだけではなく、健康や楽しさ、エンタメ性といった新たなニーズも生まれつつありますね。

FMHR 山田 これまでの延長線上にある考え方だけでは、そうしたニーズを満たす答えが出しにくくなってきている、と。

大渕 おっしゃる通りです。環境変化が激しくなるなか、従来と同じ手法では事業成長を遂げられません。大なり小なりイノベーションを起こせる人材が求められているなと感じます。

FMHR 山田 私どもとの最初の接点は、セミナーにご参加いただいたことでしたね。

大渕 ええ。弊社の人事担当役員が出席させていただいて。社に戻ってくるなり「いい方が見つかったよ」と言われたのを覚えています。ただ理屈をこねるようなコンサルではなく、顧客の中に入り込んで手を動かしてくれるという感触を持ったようです。後日、あらためてFMHRさんに個別にご相談する機会を設けていただきました。

FMHR 山田 2019年のことですね。当時、御社が抱えていた悩みはどんなものでしたか。

大渕 新たな人事戦略の一環として人事制度を改正する案はあったものの、経営層の視点に立つと、それが事業成長にどうつながるのかという点が非常に見えづらく、なかなか前に進んでいけない状況に陥っていました。FMHRさんにご相談したところ、事業あるいは経営は今後どうなっていくか、それを踏まえると人事戦略はどうあるべきか、この2つをセットとして考えたうえで議論を交わすことができました。そのことがご支援をお願いする決め手になりましたね。

FMHR 山田 まずは、全社人財像を描き出すところからのスタートでした。

大渕 事業成長を牽引できる人財像をつくれたことは、最初の一歩として非常に大きかったです。それをベースに、採用やキャリア・能力開発、組織開発へと考えを展開することができましたから。

FMHR 山田 人材の価値を最大限に引き出すことで中長期的な企業価値向上につなげる「人的資本」という考え方に基づいて、当時は議論を重ねていましたが、今になって思うと、時流を先取りするような取り組みでしたね。その後、制度改正を進める一方で、新たにつくった全社人財像をすぐに採用に生かしておられました。

大渕 全社人財像に対して私ども自身が腹落ちしていたからこそ、具体的な動きにスムーズにつながったのだと思います。基本姿勢として「オーナーシップ」「リーダーシップ」「パートナーシップ」の3つを定めましたが、このうち1つでも欠けていれば、どんな技術や経験を上積みしても弊社が求める人材にはなりませんから、採用においてそこはしっかりと見極める必要がある。そうした認識を面接官役の社員と共有し、実際の面接時の質問事項にまで落とし込みました。

FMHR 山田 人財像を絵に描いた餅にせず、スピーディーに具体的な実践に移す姿勢が非常に印象的でした。制度改正に関しては、旧来の職務等級制度をより実態に即した形に整え、特にマネジメント層に対する評価のあり方を見直すところが重要なポイントでしたね。

大渕 実は、改正のプロセスを進めながらちょっとしたチャレンジをしていたんです。各部門の若手のキーマンが集まる機会を設けて、事業と人材にまたがる弊社の課題を洗いざらい話したうえで制度改正に対する意見を求めた。そうやって現場の協力も得ながら、納得感のある制度をつくり込んでいきました。

これからに必要な「選抜人材の能力を引き上げる」という発想

FMHR 山田 御社との取り組みで特徴的だったのは、人事制度の改正だけではなく、それに連なる育成施策まで含めて、人事戦略をトータルにサポートさせていただいたことでした。私としても非常にやりがいを感じましたし、思い入れの強いプロジェクトになりました。

大渕 切り出した一部だけを変えるというお話だったなら、そもそも前に進んでいなかったでしょうね。戦略採用に始まり、タレントマネジメントシステムによる一元的な情報管理、その情報に基づく能力開発やジョブローテーション。組織開発。それら全てを下支えする人事制度。それらを含めて一体として捉えてこそ、実効性のある人事戦略になる。経営からGOサインが出たのも、人事制度改正だけでなく、このように人事戦略を広く捉えていたからでした。

FMHR 山田 教育体系をつくるフェーズを振り返っていただくと、何か印象に残っていることはありますか?

大渕 今後求められる能力開発のあり方に関して、事業成長を促進する人財を計画的に輩出する重要性を改めてお示し頂いたことです。全体の底上げもしつつ、これからの事業環境を考えれば、事業を牽引するトップアップいわゆる「選抜」も今まで以上に戦略的に取組むべきだと。今までも選抜研修は実施しておったのですが、どちらかというと点。レイヤーごとに選抜人財をプールし、能力開発+タフアサインメント(成長機会の積極付与)で成長を加速し、上位レイヤーにどんどんあげていく。このような重層的な施策は私たちだけでは企画できなかったです。

FMHR 山田 その「選抜」に対して、いざ実施しようという段になって尻込みする企業も少なくないんです。どうしても、選ばれなかった人への配慮が働いてしまう。でも御社の場合は、選抜することを恐れていないし、それぞれが発表する成果物に関してもどれが優れていたかをきっちりと決めておられますよね。研修をご担当されている満田さんは、そのあたりをどのように考えていらっしゃいますか?

満田 社として過渡期を迎えていて、各部門がチャレンジをしていかなければならないという認識が私自身にあるので、選抜の必要性も理解したうえで取り組めていますね。受講者の側も、選抜されることによって「自分が今いるポジションはここなんだ」という気づきにつながっています。一方で、受講者の中から優秀者を決めることについては、最初は少し抵抗感がありました。ただ、高い評価を得られなかった受講者に対しても期待を込めてフィードバックはしていますし、他の受講者の発表を見ることで刺激にもなっているはず。今は、うまく相乗効果を引き出せているなと感じます。一方で、変化の激しい事業環境においては、求められる能力も変わっていきますので、これらにしっかりと対応するべく、引き続き、実施効果の高い能力開発施策を検討、実施していきます。

研修の成果発表を戦略的に活用。人材に最適な活躍の場を

FMHR 山田 御社で実施している研修は、若手を対象とした「課題解決」と、近い将来マネジメントを担うことになるレイヤーを対象とした「マネジメント基礎研修」の2つですね。どちらも数カ月間にわたるロングランなプログラムですが、運用は大変ではないですか。

満田 私自身はそんなに……。むしろFMHRさんにかなりご苦労をかけてしまっているような気がします(笑)。

大渕 私からも「運用面もFMHRさんに頼ろう!」と言ってあるのです。その分、私どもが注力すべき業務。具体的には、研修で明らかになった能力課題の本人へのフィードバックであったり、タフアサインメント施策の検討などにフォーカスできている。なので、FMHRさんは同じチームの仲間という感覚ですし、すごく感謝しています。

FMHR 山田 そう言っていただけると嬉しいですね。研修は実施2年目になりましたが、その成果についてはどのようにお感じですか。

満田 当初は、選抜されたことに対して「忙しいのに……」といった感想を漏らす受講者も一部にはいました。ただ、回を重ねていくなかでそれぞれに学びを得たり、自分自身や自部署が抱える課題が明確に見えてきたりと、取り組む姿勢が変化してきたのを感じています。実際の業務に生かそうとする動きも出てきていて、研修を研修として捉えないようになってきましたね。

FMHR 山田 なるほど、良い変化ですね。研修の成果物を役員の前でプレゼンする機会もあるわけですが、私がその場に同席させていただいて感じたのは、役員の方たちの驚いたような反応です。表情を拝見していると、新鮮な感覚を持っておられたようでした。

満田 確かに、そうかもしれません。社長や役員の立場から見ると、社員一人ひとりの具体的な仕事や役割、スキルまでは把握しきれないところもあると思いますので、「こんな人材がいたのか!」と知ってもらう機会になっていますね。

大渕 そのあたりも戦略的に取り組んでいます。最終成果発表前の1次審査は、最終プレゼンに出席しない役員や、全社の中で重要な役割を担う戦略・企画系マネージャーで行う。そうすることで、満田が申し上げたように「この人材いいね」と彼らの目に留まり、次のポジションを判断する材料にもなるわけです。Off-JTの能力開発と、装着した能力を発揮する仕事を与えること。この2つがセットにならないと、それこそ研修のための研修で終わってしまいますから。

FMHR 山田 常に実効性を念頭に置いて人事戦略に向き合う姿勢はお世辞抜きに素晴らしいと思います。今後に目を向けると、どのような課題に取り組んでいきたいとお考えでしょうか。

満田 研修の内容を、選抜された受講者だけに留めておくのではなく、他の社員にも浸透させたいですね。弊社は数千人規模の会社ですので、どのように社内浸透を図っていくのか、その方策を考えていきたいと思っています。

大渕 私としては、次々と変化する事業環境に後れを取らないように、能力開発にさらに力を入れていくつもりです。例えばマーケティングや商品企画、DX……いずれも企業が成長していくうえで欠かせない機能ですが、そこに弊社の強みがあるかと言われると、やっぱりまだまだ。新たに学び、仕事に生かす取り組みをスピード感を持って推進していかなければいけません。そしてもう一つ、今後は総花的に人財を配置するのでなく、事業成長の中核を担う組織に人財を集中させることも必要となってくるでしょう。事業環境を的確に捉え、部門ごとの利益ではなく社全体の利益を考慮したうえで、優秀な人材を一点集中的に配置する。そんな施策も大胆に採り入れていくべきだろうと考えています。

FMHR 山田 全社人財像や人事制度といった土台の部分を固められたとはいえ、課題が尽きることはありませんね。これからも引き続き、いろいろな角度からサポートさせていただければ幸いです。

※内容およびプロフィールは取材当時のものです