株式会社OCS
成長を加速させる人事制度へ――拡大路線を歩み始めた国際物流企業の新制度づくりを支援
成果に対してしっかりと報いてあげられる制度を目指しました
執行役員 業務企画部 部長
前田 和男
多面評価も含め、運用面では順調なスタートが切れています
業務企画部 人財サポートチーム マネジャー
工藤 晴美
弊社が目指すべき方向に即した人事制度をご提案いただけました
業務企画部 人財サポートチーム リーダー
神取 洋行
ANAグループの一員として、多様なロジスティクスソリューションを提供する国際物流企業、OCS。一時は苦境に陥りながらも業績が着実な回復を見せるなか、成長企業にふさわしい新たな人事制度の策定に踏み切った。そのプロセスを支援したコンサルタントとともに、新制度に込めた思いや運用の手応えを語り合った。
経営危機から脱却。さらなる成長を後押しする人事制度へ
FMHR 小嶋 まず、OCS様の企業プロフィールについてあらためて教えてください。
神取 弊社は1957年、日本の大手新聞社による共同出資で設立され、海外で暮らす日本人の駐在員向けに日本の新聞をお届けするところからスタートしました。2009年にはANAグループの一員となり、現在に至ります。紙の情報媒体のニーズが年々下がっていくなかで、新聞を海外に届けるサービスから、モノを海外に運ぶ国際物流へと事業の軸足を移し、現在は小口の国際貨物をドア・ツー・ドアでお届けする国際エクスプレスサービスが事業の主軸となっています。それに加えて、ここ数年はフォワーディングやロジスティクス、ECなど、様々な物流の領域に事業を拡大しているところです。
FMHR 小嶋 今回、人事制度の改定プロジェクトを支援させていただきましたが、改定前の制度はいつ頃つくられたのでしょうか?
工藤 2015年ですね。当時、弊社の経営は厳しい状態にあり、人件費を含めた事業構造の見直しの一環として制定されました。
FMHR 小嶋 その制度を改定しようグループとしてだったのでしょう?
前田 背景の一つに、OCSグループとして打ち出した「2023-2025年度中期経営計画」があります。そこで中心課題として据えられたのが、DXと人財でした。また10年ほど前にできた旧人事制度は、厳しい経営状態を乗り切るためにつくられた面があり、どちらかといえば縮み志向がベースにありました。ただ、弊社は2019年に黒字に転換するなど経営状態が大きく回復してきましたので、今後さらなる成長を目指す企業にふさわしい人事制度へと変える必要があると判断したんです。
FMHR 山田 具体的には、旧来の人事制度のどういったところに課題感をお持ちだったのですか?
前田 シンプルにいえば、成果に対してどれだけ報いることができるか、という点ですね。特に若手社員に対する評価と報酬の部分。頑張って成果を出したら、そこにしっかりと報いてあげられる制度にしたいという思いがありました。
神取 今後いかに事業成長させていくか、いかに付加価値を出していくかということが重要になっていくなかでは、人事制度も、弊社の成長を担っていける人材を後押しするようなものでなければなりません。以前の制度では対応しきれないというのが実情だったかと思います。
制度設計の前段階で事業分析に時間を費やす意義とは
FMHR 山田 自社内のリソースだけで制度改定に取り組むお考えはありませんでしたか?
工藤 ANAグループはやはり航空関連の企業が多く、何か制度を変えようという号令がかかったときに足並みを揃えやすいのですが、それに比べると弊社は歴史的な経緯もあって独自性がかなり強いんです。また、今回の改定はパッチワーク的な修正ではなく、制度を一から見直したいという思いもありましたので、外部の知見をお借りするしかないと考えました。
FMHR 山田 その中でFMHRにお声がけいただけたのはなぜでしょう?
神取 工藤も私もいろいろなコンサルティング会社のウェビナーなどにはよく参加していて、「FMHRさんのウェビナーはいつも面白いね」という話をよくしていたんです。今回、いざ自社の制度改定をしようとなったときに、FMHRさんが自然と候補に挙がりました。
前田 複数のコンサルティング会社から提案をいただきましたが、FMHRさんは弊社の事業をしっかりと認識したうえで、それに沿って人事制度をつくりあげていこうというスタンス。運用面まできちんと目配りされているところも好印象でしたね。
工藤 母体が経営コンサルティング会社ということで、経営目線から制度を考えていただけそうだという期待もありました。
FMHR 山田 ありがとうございます。実際にプロジェクトをご一緒させていただいたわけですが、そうした期待感に応えられたでしょうか。率直なご感想をお聞かせいただければと思います。
神取 弊社の経営状況や事業戦略を分析するフェーズに最初の2カ月間ほどが充てられていて、正直にいえば「結構な時間をかけるんだな」と思いました。でも、その後、具体的な制度設計に入っていったときに、あれだけ時間をかけてしっかりと分析したことの意義を感じることができました。人事の課題も含めて社の状況を共有できていたからこそ、我々にフィットする制度をご提案いただけたのだと思います。
FMHR 山田 人事制度をつくりあげていく途上で、「ところで今回の改定の目的って何だったっけ」という話が出てくるケースがままあり、そういうときはプロジェクトが頓挫しやすいんです。方針に関する目線合わせのフェーズは多少時間をかけてでもしっかりやることが大事。その点にご理解をいただけたのは私としてもうれしいです。
工藤 プロジェクトチームには経営企画のメンバーも入ってもらっていました。昨今では「人事と経営の一体化」の重要性が指摘されているなか、経営サイドと認識の共有をしたうえでプロジェクトを前に進められたのは、連携を深める意味でもよかったなと思います。
新制度の主眼は「ハイパフォーマーに対してしっかりと報いること」
FMHR 山田 具体的な制度設計に入った初期の段階で、人事ポリシーを定めるステップがありました。そのときに御社が強いこだわりをお持ちになっていたのが印象に残っています。
神取 たしかに、人事ポリシーのところは議論を重ねましたね。それまでも「人事制度をどうするか」というテクニカルな議論はよくやってきましたが、幹となる考え方の議論はほとんどしてこなかった。せっかくの機会だからということで、みんなが納得できるまで話し合いました。
工藤 今になって振り返ると、議論したかいがあったと思います。たとえば従業員とのコミュニケーションの中で、制度を変えた理由や意義を伝えるときに、こういうポリシーが根拠になっているんだという形で明確に発信できています。
FMHR 山田 すばらしいですね。私たちが提示したものに対して曖昧にうなずいていただくよりも、皆さんがしっかりと議論して腹落ちするものをつくっていただけたのはよかったと思います。少々、あそこで予定以上に時間を使ってしまいましたが……。
工藤 そうですよね(笑)。私たちも、この先ちゃんとスケジュール通りに進められるのかなと心配になりましたが、そこはFMHRさんがしっかりとマネジメントしてくださいました。定例ミーティングなどでのファシリテーションの巧みさにずいぶん救われました。
FMHR 山田 人事制度そのものに関して、御社としてこだわったのはどんなところでしたか?
工藤 やはり評価と給与についてはかなり議論しましたね。小さな修正であっても、人件費の総額としては大きく動きます。どれくらいのさじ加減にすべきなのか、その調整には苦心しました。
FMHR 山田 従業員にどう受け止められるか、というところも強く意識されていましたね。経営目線、あるいは制度のつくり手側の目線だけでなく、従業員の方たちの目線もすごく大事にされていました。
神取 私は以前、労働組合にいたこともあったので、そちら側からの目線でどう見えるかということは自然と考えていました。今回の制度改定では、よりメリハリをつけた報酬体系にすることが基本方針だったものの、評価が低い人の賃金を下げることが目的だったわけではありません。どちらかといえば、ハイパフォーマーに対してしっかりと報いることに主眼が置かれていたわけで、そのあたりのバランスにはこだわりました。
準マネジメント、多面評価、評価者研修……その運用の手応えは?
FMHR 山田 新しい人事制度の特徴の一つが、一般職とマネジメント職との間に「準マネジメント」という中2階のような区分を設けたことかと思います。すでに運用を開始されたなかでの感触はいかがですか。
前田 そういった等級を設けたことで、対象者を絞った形での育成ができるようになってきた面があります。準マネジメントにアサインされた従業員の意欲も上がっており、アサインする側とされる側、双方に良い効果が出ているのではないでしょうか。
FMHR 山田 管理職に対する多面評価も、御社の強い思いがあって新しい制度に導入されることになりました。こちらの運用の手応えはいかがですか?
工藤 導入前に懸念していたような、好き・嫌いによって評価に極端な偏りが出るようなことはありませんでした。制度の説明会を開いた段階では、「感情的な評価が入ってしまうのでは」といったような不安を感じている管理職もいたと思いますが、結果としてはあくまで事実に基づいた評価が多くなされていましたので、1年目としては大きな問題なくスタートが切れたかなと思います。
FMHR 山田 多面評価は、管理職に一定の緊張感を持ってもらうことが狙いの一つ。ひとまず導入の効果はあったといえそうですね。
FMHR 小嶋 合わせて実施させていただいた評価者研修についてもお聞きします。研修を受けた方たちからは、どのような反応がありましたか?
工藤 短時間にまとめてコンパクトな形で実施していただけてよかった、という声が聞かれましたし、研修自体は良いものだったと思います。ただ、その内容の落とし込みの部分ですよね。どうしても個人差が出てくるところですので、そのあたりの課題はまだ残っているかなと感じています。
神取 弊社では評価者研修をずっと実施できていなかったので、今回の制度改定というタイミングで研修を通じて共通理解をつくっていくという点では非常に意味がありました。目標設定についても、部署によっては、目標調整会議の中で出た指摘をしっかり受け止めて目標の見直しをする動きも見られています。以前なら「忙しいから勘弁してよ」といった感じになりがちでしたので、そこは大きな変化が生まれていますね。
FMHR 小嶋 評価者研修だけでなく、被評価者向けに動画コンテンツを用意されたところも今回のプロジェクトの注目すべき点だったかと思います。
工藤 一般職に対して、目標設定をする前に確認してもらうよう周知しました。義務ではありませんが、指示されたことに対してマジメに取り組む社風でもありますので、多くの人に利用してもらえました。動画を見て、目標設定や評価制度の理解を深めている管理職もいたりと、ターゲットとして想定していた人以外にも活用してもらえていますよ。
FMHR 山田 私どもとしても、いかに運用できる制度にするかという視点を大事にしながら支援させていただきましたので、問題なく運用いただけていることが確認できてよかったです。今後も従業員の皆さんの反応をご共有いただきつつ、我々にできることがあれば、ぜひお気軽にご相談いただければ幸いです。
※内容およびプロフィールは取材当時のものです