CASE

株式会社日本ケアサプライ

営業所長らを対象にマネジメント研修を実施 ――対話力アップが組織のエネルギーを引き上げる

「個人に迫る」ことが人材育成の要諦だと考えています

代表取締役社長 兼 CIO

高﨑 俊哉

企画段階から気軽にご相談できるのがFMHRさんの良さ

人事部 人材開発グループリーダー 兼 総務部 サステナビリティ推進グループ

鶴岡 国光

福祉用具のレンタル卸を手掛ける「日本ケアサプライ」。市場環境の変化に合わせて事業領域を拡大していくなか、これまで手薄だった人材育成にも力を入れ始めている。営業所長らを対象としたマネジメント研修の狙いや、受講者の変化、今後の課題などについて、経営のトップを交えて語り合う。

福祉用具レンタル卸の先駆者が人材育成への投資に着手

FMHR 金田 本日はよろしくお願いします。まず、御社の事業や理念についてあらためて教えていただけますか?

高﨑 2000年に介護保険制度がスタートするにあたり、ベッドや車いすをはじめとする福祉用具の安定供給が課題となりました。高齢者の場合、様態変化とともに用具に求められる機能が変わるため、(買い替えの必要がある)販売による供給は難しい。そこで、レンタルという形で柔軟に福祉用具を提供するビジネスモデルを確立したのが弊社です。業界の草分けであり、現在もトップポジションの地位にあります。 2018年に社是を改定し、「健康長寿社会への貢献」を我々の新たな存在価値と定めました。福祉用具のレンタル卸事業を徹底的に高度化する一方で、生活支援物販や食事サービスといった高齢者生活支援サービスの拡充にも取り組んでいます。

FMHR 金田 弊社が人材育成のご支援をさせていただくようになったのは2019年からでしたね。

鶴岡 恥ずかしながら、当時は人材育成に対する経営資源の投下が十分にできていない状況でした。ちょうど、次世代リーダーを育成する研修を実施したいと考えていたところにFMHRさんが無料セミナーを開かれるということで、私が参加させていただきました。それがすごく良かった。いわゆるコンサル会社というと、話す内容が教科書的だったり、コンサルの世界の言葉で話してこられたりする印象があったのですが、FMHRさんはあくまでこちら側の言葉で話してくださいました。だからこそ、すごく分かりやすかったんです。

高﨑 経営コンサルティングの会社を母体としている点もプラス材料でした。経営と人材マネジメントはもともと不可分ですが、その密着度は近年さらに高まっています。両方の視点を併せ持っているからこそ、経営課題を踏まえた人材育成のあり方を的確にご提案いただけると考えたわけです。

FMHR 金田 ありがとうございます。それ以来、営業所長など主に管理職向けの研修を実施させていただいていますが、高﨑社長は自ら研修に参加されるなど、人材育成を非常に重視されていますね。

高﨑 弊社を取り巻く課題には様々なものがありますけれども、あらためて整理してみますと、やはり人材育成こそが全てを貫く軸なんです。単純化すれば、組織のエネルギーの総量を高く保ち、そのエネルギーを同じ方向に向けることが組織運営の軸となるわけですが、約1600人の従業員から成る集団のエネルギーをいっぺんに引き出すなどということは、なかなかリアリティがありません。一人ひとりの個性も、担う仕事も違うわけですから。結局のところ、「個人に迫る」ことが必要になってくる。それこそが人材育成の要諦であると考えています。

FMHR 金田 全くその通りですね。御社の場合、手始めにフォーカスすべき個人として営業所長をピックアップし、その層を対象とした研修を実施している形になろうかと思います。

高﨑 それには弊社特有の構造が関係しています。弊社の組織構造は、東京の本社にいるのは150名程度で、残りのおよそ9割の従業員が全国にある約90の営業拠点に分散している“文鎮型”。つまり、ヒト・モノ・カネ・情報といった経営資源は各営業拠点に集中している。そう考えると、営業所長は弊社の中で最も本質的なレイヤーであり、経営人材育成に適したポジションであると言えますので、そこを重視しているのです。加えて、中間幹部を経営リーダーとして育成することは、おのずとその部下を育成することにもなり、人材育成投資の面展開へとつながっていくことも期待しています。

部下の声に耳を傾けるマネジメントで職場の雰囲気が改善

FMHR 金田 研修の内容としては、対話力や傾聴力などをテーマに学んでもらい、例えば部下とのコミュニケーションに生かしていただくようなコンテンツになっています。受講者の方たちの反応や、研修を受けての変化などはいかがでしょうか。

鶴岡 研修を機に少しずつ変わってきたなと感じますね。「とにかく自分の考えを伝えればいい」というマネジメントをしてきたけれども、何か違うんじゃないかという課題意識をずっと持っていた営業所長がいたのですが、彼は研修で教えていただいた「Will/Can/Must」のフレームワークをベースに部下と話し合うことで、部下の意思をなるべく汲み取ろうと努力したそうです。その結果、部下の考えに合わせた仕事を任せられるようになった、部下とより打ち解けて営業所の雰囲気もずいぶん変わったと手応えを感じているようでした。

高﨑 とても良い傾向ですよね。私の課題意識の一つに、組織としての文化をいかにつくるかというものがあります。そこで重要となるのが、動機付け要因(仕事の満足に関わる要因)と衛生要因(仕事の不満足に関わる要因)。人材を育成することや、適切に人材マネジメントを行うことは、それら両方の要因に影響し、結果として魅力のある職場ができる。課題となっている高い離職率の改善にもつながっていくと考えています。

鶴岡 組織のフラット化の必要性が指摘されているなかで、やはりマネージャー層にとっては対話力が非常に重要だなとあらためて感じています。一人ひとりの意思をマネジメントにどう反映させるか、先ほど高﨑も申し上げたように、エネルギーをどうやって同じ方向に向かわせるか。そのカギになるのが対話力であって、だからこそFMHRさんにお願いしている研修でもそこをベースにプログラムを組んでいただいています。

FMHR 金田 講師を務めさせていただいている立場から申しますと、受講者の皆さまには良い意味でギャップを感じました。シャイな方が多く、あまり積極的に発言をしないといったことを事前に伺っていたのですが、全くそんなことはありませんでした。論点さえ整理できていれば、侃々諤々の議論を繰り広げられていらっしゃいます。

高﨑 何度も研修を重ねてきたことで、弊社のスタッフにどういう人材がいるのかをよく知っていただいていることも大きいのだと思いますよ。時代に合わせて研修プログラムを新たに開発されていくかと思いますが、その際はうちをどんどん実験台に使ってください(笑)。

鶴岡 受講者同士の議論がはかどるのは、研修コンテンツや講師の方の個性によるところもあるのかなと感じます。うまく「情」と「理」のバランスを取られているな、と。

FMHR 金田 私を含め、事業会社を経験したコンサルタントが多いんです。実際の業務遂行においては、“あるべき論”だけでは解決できないことが多々ありますし、そこで多くの人がつまずく。“あるべき論”をしっかりと捉えつつも、仕事の現場でどう対応すればよいかというところにも目配りすることが大事です。そうした壁を、ぜひ一緒に越えていければと常々考えています。

リーダーシップの対立概念「フォロワーシップ」が重要なキーワードに

FMHR 金田 今後に向けた課題としてはどのような認識をお持ちでしょうか?

高﨑 リーダーシップを涵養することと同時に、その対立概念であるフォロワーシップというものに対する理解も深めなければならないと感じています。ついていく側のマインドセットを意識することによって、より動きやすい組織がつくれるのではないか。今後、人材育成投資を拡充していくうえでの重要なキーワードになるかもしれないなと考えています。

FMHR 金田 なるほど。リーダーシップとフォロワーシップ、実は表裏一体のものとも言えますね。ある人がリーダーだとして、次の瞬間にはフォロワーにもなり得る。そうした動的なものと捉えて、アプローチしていくのが良いかもしれません。

鶴岡 こうして新たなテーマが出てきたとき、現場の担当者としては、これを研修にどうやって落とし込めばいいだろうと考えるわけですが、「ちょっと聞いてみよう」と気軽にご相談できるのがFMHRさんの良さ。金田さんにはご迷惑をおかけしていると思うのですが……。

FMHR 金田 とんでもないです! 企画の出発点のところから一緒に考えさせていただけるのは、コンサルタント冥利に尽きます。これからも、御社の人材育成のご支援に微力ながら貢献させていただければ幸いです。

※内容およびプロフィールは取材当時のものです