メタウォーターサービス株式会社

「背中を見て覚えろ」からの脱却――急拡大する組織が挑んだ、現場責任者育成の“仕組み化”

前のめりな姿勢と事前リサーチの深さが段違い。情熱を感じました

管理本部 人事総務部 部長

平出 圭太

受講生たちが短期間で成長していく様子に、研修の成果を肌で感じました

管理本部 人事総務部 主任

石原 瑞樹

「うちの人事部の人かな」と思うくらい、親身に寄り添っていただけました

管理本部 人事総務部 主任

川井 千春

1973年の設立以来、水環境インフラの維持管理を支え続けてきたメタウォーターサービス。近年は官民連携の波に乗り、急拡大を遂げている。その一方で、社内では組織の急成長にインフラ整備が追いつかない「成長痛」や、属人的な育成による限界という課題に直面していた。「15年間で100名の責任者候補を輩出する」との目標に向け、同社はFMHRと共に「高付加価値人材開発プラットフォーム」の構築に着手。現場が培ってきた暗黙知をいかに形式知化できるか。密な議論と共創の軌跡を、プロジェクトメンバーたちが振り返った。

急拡大の裏で生じていた「成長痛」と、人材育成の限界

FMHR 山﨑 本日は、私どもが伴走させていただいた「高付加価値人材」開発プラットフォーム構築プロジェクト、およびその後の育成施策について振り返っていきたいと思います。まずは、御社の概要についてご説明いただけますでしょうか。

石原 我々メタウォーターサービスは、メタウォーターグループの一員として、上下水道施設等の維持管理(O&M)を担っています。会社としての歴史は50年超えになりますが、2008年に現在の社名となり、それ以降、昨今の民間委託の流れを受けて事業は急拡大しています。社名変更当時は売上約51億円、社員数200〜300名程度でしたが、現在は売上200億円規模、社員数も950名規模と、ここ十数年で3.5倍以上の成長を遂げています。

FMHR 山﨑 改めてお聞きすると、ものすごいスピードでの成長ですね。

石原 現在、北は北海道から南は九州まで約100箇所の現場があります。ただ、現場によって得られる経験やスキルが異なり、配属先によって成長環境に差が出てしまうという課題がありました。

FMHR 山﨑 そうした急拡大に伴い、組織としての「歪み」のようなものも生まれていたことが、今回のプロジェクトの発端だったのでしょうか。

平出 そうですね。いわゆる「成長痛」とでも言いましょうか。事業の成長に対して、会社としてのインフラ整備が追いついていない実態がありました。人事領域に関しては、この3年ほどで人事処遇制度を刷新し、教育体系再構築にも着手しましたが、現場の責任者からは「責任者になった途端に仕事内容が変わり、苦労した」という声を多く聞いていました。中にはプレッシャーに耐えきれず退職してしまうケースもありました。

FMHR 山田 現場での叩き上げで育ってこられた分、役割の変化への戸惑いも大きかったのでしょうね。

平出 今の部長や課長は、「人は仕事の中で勝手に育っていくものだ」という環境で生きてきました。しかし、これからはそうもいきません。会社として、ある種「人工的」にでも意図を持って人材を育てられる環境をつくらなければならない。それがこのプロジェクトのスタートラインでした。

現場の荒波で磨かれた「個の力」を言語化し、仕組みに落とし込む

FMHR 山﨑 プロジェクト発足時、どのような「あるべき姿」を描いていましたか?

平出 定量的には、「15年間で100名の現場責任者候補を輩出する」という目標を掲げました。全国各地に、均質化された能力を持つ責任者が配置されるイメージです。そして、現場責任者候補を計画的に育成するためには、現場で働く社員が、キャリア形成において目指すべき姿を会社として明確に定義する必要があると考えました。

川井 今の部・課長メンバーは、仕組みがない中で育ってきた自負がある分、次の世代に対しても「背中を見て学べ」というスタンスになりがちでした。また、現場の責任者の方々は、仕事のやり方に強い誇りを持っています。ですから私としては、「高付加価値人材で現場を回していく」という方針には賛同しつつも、具体的にどう進めればいいのか、当時は不安も大きかったですね。

FMHR 山田 実際に現場を視察したり、WEBインタビューをした際、非常に優秀な責任者の方々にお会いしました。ただ、その方々はご自身のセンスと経験で逞しく育たれた“野生味”のある優秀さでした。現場で自然発生的にそうした人材が育つのを待っていては、御社の成長スピードには到底間に合いません。こうした優秀な人材を、再現性のある形で継続的に輩出したいのだなと強く感じました。

FMHR 山﨑 それを進めるパートナーとして、なぜFMHRを選んでいただけたのでしょうか。

平出 御社のオンラインセミナーに私が参加したことがきっかけです。普段なら、その後の営業アプローチには“塩対応”をするのですが(笑)、そのときはうまく時間も合ったのでFMHRの方と30分ほど話す機会をつくらせていただいたんです。その際の前のめりな姿勢がすごく印象的でしたね。数社でのコンペになったのですが、提案資料を拝読した時点で即決に近かったです。事前リサーチの深さが他社とは段違いでしたし、情熱を感じました。

FMHR 山田 そう言っていただけるのは本当にありがたいです。一方で、私が常々感じているのは、コンサルタントの熱量はクライアントの熱量に比例するということ。御社が人事課題に対して本気で取り組みたいと考えていることが伝わってきたからこそ、私たちも本気にさせられたのだと思います。

現場の思いと経営視点を橋渡しするための「横文字禁止令」

FMHR 山﨑 プロジェクトの前半は、人材要件定義やスキルマップの構築といった「仕組み化」のフェーズでした。

石原 以前は、どのポジションでどんなスキルが必要なのかが曖昧でしたが、それが整理されたことは大きな進歩でした。ただ、作成の過程ではご苦労をおかけしましたよね。

FMHR 山田 「横文字の専門用語を使わないでください」というリクエストですね(笑)。これは私たちにとっても大きな気づきでした。これまでいかに便利なカタカナ言葉に逃げていたかを思い知らされました。

平出 現場の社員は、難しそうな横文字が出てきた途端に「自分には関係ない」「分かりそうにない」と心のシャッターを閉じてしまう懸念がありましたので……。でもFMHRは、単に言葉を置き換えるだけでなく、我々の思いを汲み取って、現場に伝わる言葉へと的確に翻訳してくれました。

川井 FMHRの言語化能力には私も驚かされました。例えば、「利益管理」は事務所の仕事で、現場は「コスト管理(修繕費など)」をするもの、と意識が分断されている課題があったときも、即座に課題を特定し、方針を示してくれました。FMHRがいてくれたおかげで、ものすごいスピード感でプロジェクトが進みましたし、途中からは「うちの人事部の人かな」と思うくらいチームに馴染んでいましたね。

平出 本当に同僚のような存在で、同じイメージを完璧に共有していましたよね。過去に他の人事コンサルティング会社とお付き合いしたこともありますが、FMHRのスピード感についていくのが大変なくらいでした。特に印象的だったのは、教育企画だけでなく、研修のテキストまで一緒に作ったことです。これまでは「コンセプトは伝えるから、あとはお任せ」というケースが多かったので、そこまで深く入り込んでくるのかと驚きました。

FMHR 山田 「横文字の専門用語を使わないでほしい」というリクエストをいただいた頃から、テキストも一緒に作らなければならないと感じていました。メタウォーターサービスとしての「責任者輩出メソッド」のようなものを確立するためには、一般的な研修パッケージでは不十分です。教育プログラムそのものを御社に合わせて開発しなければ意味がないと考えました。

石原 一緒に作り上げたかいはありました。研修後のアンケートでも、受講生から「テキストや資料が自分たちの業務に合わせて構成されていて分かりやすかった」という声が寄せられましたから。

「横のつながり」を再構築する機会にもなった選抜研修

FMHR 山﨑 ここからは「育成」のフェーズについて振り返ります。次期現場責任者候補育成研修(計5日間)を実施しましたが、初日は選抜された8名の皆さんが非常に緊張されていて、まるで大学入学共通テストの会場のような静けさだったのを覚えています(笑)。まずはその空気をほぐし、打ち解けるところからのスタートでした。

石原 最初は確かに緊張していましたね。でも、1日終わるごとに受講生同士が仲良くなり、横のつながりが生まれていきました。また「ロジックツリー」などの思考フレームワークが出てきたときには当初は戸惑いを感じていたようでしたが、すぐに適応し、最終日の成果発表では、慣れないロジックツリーもしっかり使いこなして発表していました。何より嬉しかったのは、最後のアンケートで「またこのメンバーで集まる機会を作ってください」という声が寄せられたことです。短期間でここまで成長し、共通言語を持つ仲間になれた。その事実に、研修の成果を肌で感じました。

平出 今の部・課長の人間から、かつて本音で激しく議論する切磋琢磨の機会がたくさんあったと聞いたことがあります。だからこそ今も仲が良く、腹を割って話せます。しかし、組織が大きくなるにつれてそうした関係性が希薄になっていました。今回の研修には、当時のような「横のつながり」を再構築したいという狙いもありました。この再構築された横のつながりと、そこから得られる刺激こそが、彼らが今後、困難な現場を運営していく上で何よりの支えになると信じています。

FMHR 山田 懇親会の様子などを拝見していると、本当にオープンマインドな会社だと感じましたね。仕事だけでなく、その人の人となりも含めて理解し合う姿勢は、今の時代だからこそ組織の強みになる価値観だと思います。

仕組み作りはゴールではない。今後は「実践」を通じた定着を目指す

FMHR 山﨑 このプロジェクトで整理した人材要件やスキルマップをベースにした施策が動き出しましたが、現在の手応えや今後の課題についてはいかがでしょうか。

平出 スキルマップが現場の一人ひとりにまで浸透しきっているとはまだ言えません。仕組みはできましたが、これをいかに現場で実践し、活用していくか。そのための仕掛けを考えていかなければなりません。

石原 平出が言う通り、ここからが「実践」のフェーズです。頭では理解していても、それを自分のものにして、日々の仕事の中で活かしていくことにはハードルがあります。そこは研修1期生の8名に求めたいポイントでもありますが、場合によっては、私たち人事からのサポートもさらに必要になるかなと考えています。

川井 現場の皆さんは、発生したトラブルに対処する能力は日々の業務で鍛えられています。しかし、潜在的な課題を見つけ出す「問題発見能力」はまだ強化が必要です。それを身につけなければ、真の責任者になるのは難しい。どの事業所であっても同じクオリティのマネジメントを担保できるように、作成したスキルマップを活用しながら取り組んでいきたいです。

FMHR 山田 人材要件やスキルマップが現場できちんと機能しているか、引き続き検証し、PDCAを回していただくことが重要ですね。

FMHR 山﨑 上級マネジメント層を対象にした研修など、継続している施策もあります。仕組みを作って終わりではなく、その後の運用も含めて、とことん支えさせていただければと思います。本日はありがとうございました!

※内容およびプロフィールは取材当時のものです