CASE

兼松株式会社

新経営計画の成否のカギ! 兼松ユニバーシティを開講

唯一、当社の状況に合わせた “自前感”のある提案だった

人事総務部 人材開発課 課長

森 俊成

どうあるべきかを起点にした 決め方が、すごく新鮮でした

企画部 経営企画室 副室長

藤川 知明

総合商社としてさらなる成長を果たすべく、新経営計画を策定した兼松。その達成のため、経営トップから「企業内大学制度をスタートせよ」の命が下った。人事担当者とコンサルタントは、山積する課題にいかに立ち向かったのか。

トップダウンの要望が後押し 企業内大学の創設に着手

FMHR 野崎 兼松さんから教育体系再構築に関するコンサルティングのご相談をいただいたのは、2018年の年末頃でしたね。

2018年の春に、当社が「future 135」と銘打った中期経営計画を発表したのが始まりです。掲げた目標の一つ、営業利益倍増を達成するには、買収も含めた事業投資を加速させる必要があるけれども、当社にそれを遂行するための高度なノウハウも必要とされる。同時に、社員の質の向上を図っていきたいという課題認識もあり、社全体の教育をより充実させる必要があると考え、ご相談するに至ったんです。

FMHR 野崎 その後、ご提案に伺ったミーティングの席で「企業内大学制度」導入のご意向があることを初めてお聞きしました。もともとの教育体系再構築の話からそちらの方向に進んでいかれたのは、どういう経緯だったのでしょう?

当社経営層から強い要望がありました。これまでの延長線上で研修制度の拡充を図るのではなく、大学制度を創るくらいのインパクトが必要だ、と。その声に背中を押されて、開校に向けた動きが本格化しました。

FMHR 山田 そのプロジェクトにコンサルを入れようと思われたのはなぜですか?

それについてもトップダウンで指示があったんです。「旧来の研修体系が体に染みついた社内の人間だけで考えても新しいものは出てきにくい。外部の知見を借りてみればわかる。自分たちでは考えつかないことを必ず考えだしてくれる」と。

藤川 スケジュール的にも急ぐ必要性があり、それもコンサル会社に協力をお願いした理由の一つでした。

FMHR 野崎 他社でなく弊社を選んでいただけた理由はどこだったのでしょうか。

以前、FMHRさん主催のセミナーに関するお話を伺った時の印象が強く残っていたんです。それで今回は、真っ先に連絡させていただきました。ほかにも有名なコンサル会社さんに2社、まったく同じ内容でご相談をしたのですが、いずれも既存のパッケージの活用を提案してきたなかで、唯一、当社の状況に合わせた“自前感”のあるご提案をいただけたのがFMHRさんでした。すぐ上司に「ここに決めたい」と話しました。今でも、その判断は正しかったと思っています。

FMHR 野崎 ありがとうございます。我々が、それだけのご期待に添えたのかどうかは気になるところです。

まず、スケジュールのご提示を受けた時に「こんな速さで進めていくのか」と驚きました。でも、結果としてほぼ計画通りでしたし、もし自分たちでスケジュールを立てていたら、期限を延ばし延ばしにしたすえに、クオリティも今回できあがったものより低くなっていたように思います。非常に感謝しています。

藤川 7月1日に開講することが決まっていたなかで、目の前の注力すべきことと後回しにすることの取捨選択が非常にうまかった。教育や研修に携わってきた私たちを遥かに超える知見をお持ちですし、それらを活用しながら最適なステップを踏むことができたと感じています。

カリキュラムづくりのアプローチも、自分たちでは到底考えつかないような手法をご提案いただいて。

藤川 たしかに。自分たちでやると、いい講師がいるとか、おもしろい演習があるという情報に基づいて「じゃあ、やってみよう」という判断になりがち。でもFMHRさんは、兼松がどういう人材を育てたいのか、そのためにカリキュラムの内容はどうあるべきなのかをベースに、それに合った業者やクラスを選んだり組み合わせたりする手法を採った。すごく新鮮でしたね。

最初からあるメニューの中から選ぶのではなく、食べたいのはこれ、必要な栄養はこれ、という観点で選ぶような形。経営戦略を教育方針に落とし込むことが重要なキーでしたので、そうした手法を採った点はすごく大きなポイントでした。

FMHR 山田 私の経験上、ありもののメニューで組むと失敗する可能性が高い。「なぜ?」の部分が抜け落ちているから、PDCAを回せない。コンサルティング会社によっては自社の研修プログラムを押し込もうとしてくる場合もありますし、「どういう人材を育てたいか」という観点ありきで考えることは非常に重要なんです。

多数の業者を網羅的に評価 一覧が適切な選定の助けに

FMHR 野崎 今回、組んだカリキュラムは全部で53にのぼりました。その半分以上がeラーニングで実施するもので、7月1日、そのシステムの運用が始まる形で「兼松ユニバーシティ」が開講しました。教育プログラムを提供する業者の選定も、重要なステップでしたね。

FMHRさんに、各社のコンテンツの広さ・深さを一覧にまとめていただけたのが本当に助けになりました。各項目に「〇」「△」「×」という評価がついていてわかりやすかった。

藤川 コストで選ぶのか、内容で選ぶのか。研修のテーマごとに重視すべき点も変わってきますからね。もし、FMHRさんが介在していなかったら、これまでに付き合いのある、限られた研修会社のメニューから選んでいたと思います。今回はかなり網羅的に各業者のお話を聞く機会を持てましたし、客観的に比較検討できたなと感じています。

FMHR 山田 弊社のほうで13社をピックアップして、各社からプレゼンに来てもらったのですが、その際には我々も兼松さんサイドに同席させていただきました。やっぱり、プロジェクトを担うからには同じ目線を持ちたいと思っていましたので。

FMHR 野崎 あと、難所と言えば……。

ありましたね。カリキュラム作成と同時に、藤川と私とで各部署に大学制についての説明をして回ったのですが、一筋縄ではいかなかった。新しい経営計画を達成するために必要なんだとお伝えしても、すっと理解してもらえないケースもあって、かなり苦労していたんです。

藤川 そこで当社の人事総務部長が、社内の全部長30人以上に個別面談をして、大学制の必要性を少しずつ浸透させていった。現場としては「OJTで学べば十分だろう」という意識も一部にはありましたので、あの地ならしの効果は非常に大きかったですね。

カリキュラムの拡充と 対象者の拡大が今後の課題

FMHR 野崎 兼松ユニバーシティの開講から数カ月が経ちますが、滑り出しはいかがですか?

立ち上げ段階では、本社の10年目以下の全社員を対象に、必須の業務として受講を位置づけています。どんどん単位を取得している積極的な社員もいれば、まだまだ手つかずの社員もいる。それも想定の範囲内ですし、まずまず順調なスタートを切れたと評価しています。

藤川 兼松ユニバーシティが始まったことは、グループ全体に対しても打ち出しをしていますが、グループ会社から「うちも研修を強化したい」という声が聞こえてくるようになりました。全体的に人材育成に対する意識が強まっているところは、ユニバーシティを創設した一つの成果かなと感じますね。

当初、経営層は「これぐらいのインパクトが必要だ」と言っていましたが、その通りでした。eラーニング以外の集合研修として実施していくカリキュラムの整備や、中堅・シニア層向けのカリキュラムづくりもこれからです。経営層からは、このユニバーシティをさらに発展させていくアイディアも出てきているので、まだまだやることは山積みです。

藤川 大学制度自体は、先行して導入している企業も少なからずあります。私たちは後発かもしれませんが、だからこそ、よりよいもの、当社の状況に合ったものを目指していきたい。海外のグループ企業における人材育成の強化も重要な課題だと私は考えていますし、グループ全体の教育の中核になるものとして、このユニバーシティを活用していけたらと考えています。

※内容およびプロフィールは取材当時のものです