日本たばこ産業株式会社

JTの加工食品事業を牽引するリーダーを育成 ――グループ横断の選抜研修に込められた思いとは

FMHRさんは「中の人」の意識で、熱く語っていたただける

食品事業企画室 課長代理

楢崎 哲也

受講者の積極性を引き出す雰囲気づくりがなされていました

食品事業企画室 主任

矢間 雄也

JTグループは、70以上の国と地域で事業を展開するグローバルたばこメーカーだが、たばこ事業に加え、医薬事業、加工食品事業を展開している。 その加工食品事業を牽引するリーダーを育成するための研修プログラム「FLP」は2023年、3期目に入る。 これまでの取り組みと今後の展望について、JTの担当者とコンサルタントが率直な思いをぶつけ合った。

加工食品事業独自の取り組みとして「FLP」を展開

FMHR 金子 まず、御社のプロフィールについて改めて教えていただけますか?

楢崎 弊社は日本専売公社を前身として、1985年に設立されました。一時期は事業の多角化に取り組み、選択と集中のフェーズを経て、現在は「たばこ事業」「加工食品事業」「医薬事業」の3つを柱としています。JTの食品事業企画室では、加工食品事業の価値向上のための戦略の企画・立案や、事業全体の運営・ガバナンスの役割を担い、テーブルマークを中心に冷食・常温事業、富士食品工業を中心に調味料事業を展開しています。

FMHR 金子 加工食品事業のグループ会社を横断する形で次世代リーダー育成プロジェクトを展開しておられます。そうした取り組みに至った背景について教えてください。

楢崎 昨今、ビジネスを取り巻く環境は変動が激しく、先行きを見通すことが難しいといわれています。そうしたなかでJTの加工食品事業が持続的に成長していくためには、既存事業・新領域でのビジネスを、実践していく「人財」が重要だと考えています。とりわけ、事業全体を牽引するリーダーを排出するための取り組みにはこれまで未着手であったため、経営リーダーを輩出する成長支援プログラムをスタートすべきだと考えたんです。もともとJTグループとして取り組んでいたNLP(ネクスト・リーダーズ・プログラム)をベースに、加工食品事業独自の取り組みとして「FLP」を推し進めていくことにしました。

矢間 NLPのフード版というところから、先頭の「N」を「F」に置き換えて「フード・リーダーズ・プログラム」と命名しました。未来のリーダーを育てる「フューチャー・リーダーズ・プログラム」とご理解いただいてもよいかと思います。

FMHR 山田 なるほど。その成長支援プログラムをジュニア/ミドル/シニアの3階層で展開しておられるわけですね。

楢崎 はい。まずは加工食品事業としてどんなリーダーを輩出していきたいのかという観点で、各階層の“あるべき姿”を定義しました。初年度は、部長・拠点長相当のポジションとなるシニアと、長期的な成長支援を見据えたジュニアに対するプログラムに着手し、2022年度からはシニア・ジュニアの中間に位置するミドルをスタートさせました。

FMHR 山田 研修の実施に関して、私どもを選んでいただけたのはなぜだったのでしょう?

楢崎 FMHRさんは、弊社のグループ会社の1つであるテーブルマークと以前からお付き合いがあった点は大きかったと思います。すでにテーブルマーク内で研修を実施されており、従業員の強み、弱みの傾向や、今後どのような成長支援策が必要なのか、そうしたことに対する理解と知見がおありだと判断して、お願いすることにしたんです。

FMHR 山田 思い返すと、テーブルマーク様との取り組みが続いていたなかで「グループ横断で」という話が飛び込んできたんですよね。JTグループといえば大手企業ですから、正直なところ、私たちが関われるとはあまり考えていませんでした。ただ1つだけ、「やるからには良いプログラムにしていただきたい」という思いは強く持っていました。JTの担当者様とお話しする機会をいただいた際に、老婆心ながら「こうしたほうがいいのではないか」といったことをいろいろとお伝えして……。

楢崎 そういう山田さんの熱意も受け止めたうえでのご依頼だったと思いますよ。そこまで熱く語っていただけるのも、第三者という視点だけでなく「中の人」という意識がおありだからこそでしょうし、私どもとしても非常にありがたいです。

「今は恥をかいてもいいから積極的に発言しよう」

FMHR 金子 ジュニアを対象としたFLPは、グループ各社から選抜された次世代リーダー候補10数名に参加していただく形で、2021年に第1期、2022年に第2期と行ってまいりました。どのような感想をお持ちでしょうか。

矢間 私は2022年の春に異動してきて、第1期の振り返りあたりから関わるようになりました。30歳前後のジュニアの受講生よりも私のほうが年下で、かつ研修の仕事自体も初めてでしたので、最初は苦労しましたね。特に、「人をどう見るか」というところが分からなくて。山田さんや金子さんにご相談すると、「議論が停滞したときにどういう行動を取るかで、その人の強みや弱みが分かる」など、見るべきポイントを具体的に挙げていただきました。私自身が学ばせていただいたなという感覚が強いです。

楢崎 矢間自身が成長したという声は、いろいろなところから聞こえてくるんですよ。

FMHR 山田 それは私どもとしてもうれしいですね。

矢間 FLPに取り組むなかでの発見も多かったです。研修というと一方的な座学のイメージが強かったのですが、実際にはグループディスカッションを重視した、受講者の積極性を引き出す内容になっていました。講師の山田さんも「今は恥をかいてもいいから積極的に発言しよう」と繰り返しおっしゃっていましたし、コミュニケーションを取りやすい雰囲気づくりができていたなと感じました。 その結果として、最初のうちはなかなか発言できなかった受講生が、回を重ねるごとに自身の意見をしっかり主張するようになって、最後には極めて自信に満ちた発表をしたりと、短期間の中でも確実な成果を感じることができましたし、受講生側からも「プログラムに参加できてよかった」、「このメンバーでやれてよかった」という嬉しい声もいただけました。

FMHR 山田 ありがとうございます。私としては、JT本社の役員、それにグループ各社のトップも、この取り組みにコミットしてくださっているのが非常に大きなポイントだと思います。リーダー成長支援に対する本気度が垣間見えました。

楢崎 プログラムでのアウトプットやアクションプランの発表会でも、内容に対して真剣にフィードバックをいただきますし、経営陣がどんな想いをもって経営に携わっているのか、過去どのような課題感を持っていたのか等、普段の仕事では聞けないような事をざっくばらんに話してもらう機会もあり、受講メンバーにとっては将来のリーダー像を意識するきっかけにもなっていると思います。

FMHR 金子 経営陣を含め、周辺をどう巻き込んでいくかというのは大事ですよね。ジュニアの第2期を実施する際には、1期生が2期生のメンターとなり、定期的に面談をしていただくような設計にしました。

矢間 面談のペアリングは我々事務局で決めたのですが、会社や仕事を跨いだ組み合わせにすることを意識しました。そこでの対話は、メンターにも、メンティーにも学びがあったはずです。メンターの1期生にとっては、前年のプログラムで組織における自身の役割や、組織を動かすためにどのように人を巻き込んでいくかを考えてもらったので、そこでの学びを2期生とのコミュニケーションに活かすことができたのではと思っています。 また、メンティーの2期生は、これまで自分の仕事の範囲で物事を考えたいたところから、外にも目を向けることで様々な価値観や気づきを得ることができたと思いますし、双方にとって学びがあったはずです。

FMHR 金子 そうですよね。年度や会社を越えたコミュニティの形成を継続させて、ジュニアとミドル、ミドルとシニアの境をも越えたようなコミュニティにまでなってくると、より良い相乗効果が期待できるのではないかと思います。

「会社を変えたい」――使命感が顕著に見えた最終プレゼン

FMHR 山田 受講生に対して、私は「君たちは選ばれた人材なんだよ」というメッセージを強めに出すことにしました。もちろん変な勘違いはしてほしくないですが、JTグループの次世代リーダー候補に選ばれたことは誇りに思うべきだし、健全なプレッシャーを感じてほしかったからです。研修中も、「普通のサラリーマンならいいけど、君たちはそのレベルで考えているようじゃダメだ」みたいなことを言ったり。これからJTグループの加工食品事業を支えていく人材としてマインドチェンジしてもらいたいがゆえに、厳しく接しました。

矢間 選抜されたことを強く意識してほしいと考えている点は、私どもも同じです。そのあたりは山田さんによく汲み取っていただけたな、と。

FMHR 山田 そうして接してきた2期生が研修の最後に行ったプレゼンを見て、私は心から感動したんです。それぞれの所属部門が今後さらに成長していくにはどうしたらいいかを提言してもらうプレゼンだったのですが、彼らの使命感や本気度がひしひしと感じられて。「自分がいる会社を変えたい」と話してくれた人がいれば、グループ横断の成長施策を提言してくれる人もいました。それに加えて、出席されていた経営陣の方たちも本気だったことで、よりいっそう感動的な場になっていた。役員の方の感想にもありましたが、まだジュニアであるにもかかわらず、経営会議さながらの意見のやり取りもありました。

矢間 たしかに、受講生たちの熱量は高かったですね。それに経営陣もインスパイヤされていたような雰囲気でした。

FMHR 金子 2022年度よりミドルを対象としたFLPが始まり、ジュニアも3期目に入ります。そうしたことも踏まえて、今後の課題や展望についてお聞かせいただけますか?

楢崎 3階層全てがスタートしましたし、これまでの振返りを踏まえ、改めてプログラム全体を俯瞰したうえで、各階層のプログラムについては必要なアップデートを行っていきます。 また、FMHR山田さん、金子さんにご協力いただいている研修プログラムは、経営リーダー輩出に向けた1つの手段であって、プログラムでの学びや経験を、仕事の中でも活かせる環境を仕組化していくことも必要です。机上での学びと、タフアサインのサイクルが機能するような仕組みづくりにも着手しようと考えています。

矢間 私としては、先ほども申し上げた通り、コミュニティをさらに育てていくことが今後の課題だと認識しています。階層を打ち破って、どんどん大きくしていく仕組みを発展させていきたいと考えていますし、そこに関してもFMHRさんの知見を引き続きお借りしたいなと思っています。

FMHR 山田 我々もお役に立てればうれしい限りです。ジュニアに続いてミドルを対象とした研修もお任せいただきましたので、一緒に汗をかいてご支援に努めさせていただきます。

※内容およびプロフィールは取材当時のものです