CASE

株式会社日立ハイテクノロジーズ

目標管理を、評価のためではなく、パフォーマンスを向上させるツールへ進化

一緒になって考えるからこそ担当者の私も成長し、視野が広がりました

人事総務本部 人財開発部 部長代理

井上 謙

いかに目標管理を徹底させ、パフォーマンス向上と適正な評価を引き出すか。 日立ハイテクノロジーズが着目したのは、ロジックツリーの活用だった。 200名規模の部長陣に対して行った研修の手ごたえと、その後の変化とは――。

“軽視”されていた目標設定 マネジメントの意識改革へ

FMHR 和田 目標管理制度を評価のためではなく、組織と個人の目標を連動させてパフォーマンスを向上させていくためのコミュニケーションツールに進化させるべく日立グループが導入した人材マネジメントプログラム、GPM(Global Performance Management)。本件では、その定着を図る為、御社の部長を対象に研修を実施させていただきました。そこに至った背景から、まずはご説明いただけますか?

井上 事業基盤を「見る・測る・分析する」に置く弊社は、半導体製造装置や医用検査機器などの製造販売を主事業とし、日立グループの中でも主要なグループ会社の一つに位置付けられています。目標管理(GPM)は各グループ会社の状況に合わせて取り入れられているのですが、ただ、弊社でいざ推進してみると、そもそも組織と個人の目標を連動させることの重要性が全く理解されていないなど、目標管理がうまく機能していないという現状が浮き彫りになりました。

FMHR 和田 GPMに対する理解度が十分ではなかったんですね。

井上 ええ。

FMHR 和田 それで弊社にご依頼をいただいたわけですね?

井上 はい、その当時(2018年)私は人事評価を担当し始めたばかりで、目標管理などに対してまだ十分にわかっていないところがありました。その時、前任者からFMHRさんのセミナーを勧められ、それを受講したのがきっかけです。その時の講師が野崎さんで。

FMHR 野崎 確か、ロジックツリーを用いて、目標やKPIを論理的に設定していく手法についてお伝えしたセミナーでしたね。その時は、どんな感想を持たれましたか?

井上 お話を聞く前は、「そんなの無理だろうな」と、懐疑的でした。ロジックツリーは経営企画などの分野で用いられるもので、人事には通用しないというイメージがありましたし……。でもお話を聞いてみて、ロジックツリーを使った目標管理が非常にわかりやすく、「そういうふうにやればできるのか!」と実践で活用できるイメージが持てました。

FMHR 野崎 そうでしたか。他の企業でもそうなのですが、目標管理というとコーチングやティーチングといった「コミュニケーションをどうとるか」が課題になりがちなのですが、その前提となる「目標をいかに論理的に設定するか」が、できていない管理職の方が多いですからね。

井上 私自身、まさに当初はコーチングやティーチングのほうが重要だと考えていたんです。

FMHR 和田 コーチングやフィードバックを通じて個別に時間を割いて向き合うことは確かに重要ですが、そもそも目標設定時に論理的に部下の目標設定ができていなければ、有意義な時間にならないですからね。

井上 まさしくその通りで、何に対してのコーチングやティーチングなのか、その根っこの部分を固めることがまず重要だと思いました。

課長でなく部長を研修のターゲットに ロジックツリーの有効性を解説

FMHR 野崎 研修の対象を部長にするか、課長にするか、という議論もありました。

井上 そうですね。結果的に、部長を対象にしてよかったなと思っています。課長が理解していても、部長がわかっていなければフラストレーションの原因になっていたでしょう。それに、目標管理(GPM)の推進強化の際、経営、役員陣は「やるぞ」と積極的になりやすいのですが、部長になった途端にトーンダウンしやすい。自分たちが育ってきた環境を変えることに抵抗を感じる人が多いですからね。そういった意味で今回、部長の意識を変えるところに働きかけができたのは大きかったなと思います。ただ、正直なところ、研修が始まるまでは不安も大きかったです。この内容は簡単すぎるのではないか、うちの部長たちにハマるのかなって。

FMHR 野崎 ロジックツリーで物事を落とし込んでいく考え方自体は、おそらく初めて聞くようなものではないはずですからね。

FMHR 和田 だからこそ、研修までの準備にかなり時間をかけましたよね。目標管理(GPM)については日立製作所のつくった導入向け社内資料がありましたが、理解すべきポイントをより具体的に整理し直しました。

FMHR 野崎 細部まで、それこそ使う言葉一つにこだわりましたよね。弊社からの提案と井上さんからのご指摘を、5回ほどは繰り返しました。

井上 そうでしたね、そのおかげで心配は杞憂に終わりました。さらに、講師を務めてくださった和田さんのイントロがよかった。「皆さん、日ごろからきちんと評価できていますか?」という問いかけから始めて、実際に5人を評価してもらうケースに取り組んでもらった。そうすると意見が割れるんですよね。なぜ意見が割れるのか。やっぱり人事制度や目標設定への理解が不足しているのではないかと自ら気づき、それにより研修に集中することができたのではないかと思います。研修は2018年2月から3月にかけて、8度に分けて200名ほどの部長全員に実施しました。ロジックツリーが実際の業務においても有効なんだという気づきになったと思います。営業関連の部長などは「どうやって部下の評価に差をつければいいのかわからない」といった悩みを抱えている人もいましたが、目標設定から評価までのやり方がわかってずいぶん楽になったのではないでしょうか。

FMHR 和田 スポーツでもそうですが、ルールを事前に決めておくことは重要です。プレーヤーにしてみれば、後になって「こういうルールがある」と聞かされては不満の原因になってしまう。目標設定も同じで、最初にルールを共有しておけば納得感が出やすいので、きちんと評価の基準、軸を伝えておくことは大切ですね。

目標の入力率が99%に! 今後は海外法人への展開も

FMHR 野崎 研修を受講した方々の反応はいかがでしたか?

井上 「講師の方は何で弊社の実情をこんなに知っているんだ」と驚いている人がいましたよ。和田さんたちの研修までの準備が徹底していたからでしょう。そうやって会社の状況に合わせてカスタマイズした内容にしていただけたことは本当によかったなと感じています。普通、コンサルというと、自分たちにできないところをお任せするといったイメージがありますが、FMHRさんの場合は一緒になって考えていく。だからこそ、担当者の私自身も伸びるんです。私自身、この研修プロジェクトを通してすごく視野が広がりましたし、自信がつきました。

FMHR 野崎 研修実施後、部長さんたちの行動に何らかの変化はありますか?

井上 各部長、目標を設定して報告することになっているのですが、以前は入力率が8割以下。研修後はそれが99%にまで上昇しました。書かれている内容も、具体的な数値が伴うようになってきて、ただ「〇〇製品を売る」ではなく、「単価アップの為、〇〇製品を〇台、いついつまでに売る」といったところまで組織目標を連鎖した形で具体的に書かれる方が増えていますね。それぞれの目標に連なる項目にKPIが設定されているので、部下の人たちも、自分がやっている仕事がどの目標に紐づいているのかを理解しやすくなっていると思います。

FMHR 野崎 それは嬉しいですね。最後に、今後はどのような課題があると考えていらっしゃいますか?

井上 ロジックツリーを使った目標設定が社内で当たり前のものになっていくようにしたいなと。それと同時に、海外の現地法人にも同様の考え方を浸透させていきたいと思っています。来期は課長に対象を広げて、同じ研修を行ったり、eラーニングのシステムを活用してパフォーマンスマネジメントへの理解を促したりしていく。そうすれば、目標管理(GPM)や目標設定がいわば共通言語になる。2021年度には、会社のマネジメントが大きく変わると確信しています。

※内容およびプロフィールは取材当時のものです