CASE

株式会社QUICK

“1on1”で個別にフィードバック 次世代リーダー層に新たな視座を

期待されているリーダーとしてどういう視点を持つべきか

ひとづくり本部 副本部長

島 睦

“筋トレ”みたいな感じで頭をすごく使いました

リサーチ本部 資産運用研究所 エキスパート 企画研究部 研究員

石井 輝尚

時々刻々と変動する金融情報を的確かつ迅速に提供する「QUICK」。同社の次世代リーダー候補に対し、論理的思考力や課題解決力の向上を図る研修が実施された。受講者の声も交え、研修の意義や収穫を振り返る。

長期経営ビジョン具現化へ 次世代リーダー育成を推進

FMHR 堀井 初めに御社の事業概要と、研修を実施するに至った背景について教えていただけますか。

弊社は日経グループの一員で、株式や為替等にまつわる情報を、金融資本市場に関わる法人や個人に対して意思決定のツールとして提供しています。いかに付加価値をつけた情報提供をするかが、重要なミッションですね。2018年末に長期経営ビジョンを策定し、企業として進化するための施策を実行していくことになりました。そのうえで、自律的にビジネスを推進するリーダーの育成が必要と考え、研修を企画したんです。

FMHR 堀井 今回の研修の主眼の一つは、論理的思考力と課題解決力の向上を図ることでした。その狙いも教えてください。

実務経験を通してリーダーとして成長していくものだとは思いますが、まずは基礎的なスキルとして、それらの力を身につけておくことが重要だろう、と。実践で使いこなせるレベルまでスキルを定着させられるような研修を行いたいと考えました。

FMHR 堀井 弊社FMHRにお任せいただけたのは、どのような理由だったのでしょう?

数年前に部長層向け研修のご提案をいただいていたんですよね。私たちにフィットした内容で、ぜひやりたいと考えていたのですが、ちょうど人事制度が変わる時期と重なって見送らせていただいた。そういう経緯もあり、今回は次世代リーダー層向けにあらためてお願いすることにしました。実施の決め手になったのは「研修・実務・フィードバック」がセットになっているところ。インプットだけの研修だと、せっかく学んだことが定着しないというケースがよくありますから。事後にスキルチェックサーベイを行い、成果の可視化ができるうえ、上長のコミットまで担保された設計になっている点は魅力的でしたね。

FMHR 堀井 ありがとうございます。実際に受講された石井さんに感想をお聞きしたいと思います。最初の説明会から、動画によるインプット、毎週の個別フォローアップと、全編オンラインの研修プログラムでしたが、その点はいかがでしたか?

石井 全く問題なかったです。私を含め20名の受講者とコンサルタントが1on1で対話する形でしたから、むしろリモートで良かったのかなと思います。

FMHR 堀井 中身についてはいかがでしょう?

石井 過去に受けた研修の中には、性格的に合わないものもありまして……。ですから、今回も最初は一歩引いた感じで様子見から入り、課題への取り組みも少々おざなりでした。そこは反省点です。

FMHR 野崎 問題解決について考える動画を見るところからのスタート。その段階から積極的な姿勢を持っていただくのは難しかったかもしれませんね。

石井 「会社の売上が1億円足りない。どうすればよいか」と言われてもピンと来ませんでした。ただ、そのあとのフォローアップで理解が深まりましたし、実務に直結する内容へと変わっていったので、自然と前向きになりました。

FMHR 野崎 後半になるにつれて、質問の量も質も変わってきた印象がありましたね。

石井 その通りです。最初はなかなかロジックツリーをうまく描くことができず何度かやり直しをしましたが、野崎さんからヒントをいただいてからは、一気に課題が楽になっていきました。その一線を越えるところまでは、まさに“筋トレ”みたいな感じで頭をすごく使いましたね。個人的には、これまで受けてきた研修の中で一番良かったなと感じています。

FMHR 野崎 うれしいです! トライして悩むからこそ、もやもやが晴れたときの達成感も大きい。1日だけのワンウェイの研修ではなかなか得られない成果ですよね。

石井 毎回、1on1で話す前に、野崎さんがあれこれと雑談をしてくれて。そういうアイスブレイクの時間をつくっていただけたのもすごく良かったです。

社全体の経営に行き届く視点を持てるかどうか

FMHR 堀井 島さんは、それぞれの受講者からヒアリングをされたかと思いますが、どういった声が多かったですか?

個別形式の研修は弊社としてはほぼ初めての試みでしたが、石井が話した通り、みんな戸惑いつつも思考のトレーニングになったようですし、集合研修にはない良さを感じましたね。この研修は「次世代幹部候補育成研修」という、ちょっと大げさな名前にしました。かつ受講者は全員、上長からの推薦を受けた人たち。それは受講者の皆さんに、単にスキルを身につけるだけでなく、社や上長から期待されていることを理解してほしかったからです。FMHRさんには、視座が高くなり視野が広がるような課題設定をしていただくようお願いしました。

FMHR 野崎 自分の仕事や部門のことだけでなく、会社全体の経営にまで行き届くような視点を持てるかどうか。そういった意味では、研修の中で「これは全社的な問題なのかも」といった発言をされる方もいて、各々の視座に変化が見られました。

私もそう感じました。期待されている自分が、次のリーダーとして、どういう視点でこれからの業務に当たっていくべきなのか。それを考える、良い機会になったと思います。

受講内容が習慣化「モノの見方が変わった」

FMHR 堀井 研修を経て、今後の課題なども見えてきましたか?

一つは、この研修で学んだロジカルシンキングなどのスキルを社内に広く浸透させることですね。例えば、「MECE(モレなく、ダブりなく)」というワードを共通言語としてトークできるような状態に持っていく。もう一つは、社員の成長につながるような人事制度の整備を進めること。働き方もビジネスも変化していくなかで、より活用される制度になるよう、運用やルールを柔軟に見直していく必要があると感じています。

FMHR 堀井 石井さん、研修を受けていただいてからしばらく時間が経ちましたが、学んだスキルは実際の業務で生かせていますか?

石井 もちろん課題解決の方法を体系的に学んだ成果は、現実の課題が出てきたときに生かせていますし、それ以外にも野崎さんからいただいたアドバイスのさまざまなエッセンスが活用できていると思います。例えば、「一言で言うとこう」、そのあとに「具体はこう」という形で展開していくスタイル。お客さま向けの資料や記事執筆など、何かを伝える仕事をするときの習慣になりました。

FMHR 野崎 石井さんはもともと「具体」には強いタイプ。いろいろなファクトを列挙することはできていましたが、「抽象度を高くするとどうなりますか?」とお尋ねすると、なかなか答えが出てこなかった。

石井 そこがまさに“筋トレ”でした。でも、研修を経てモノの見方が大きく変わった。自分以外の人が作成した資料を読むときも、以前はただ内容を追うだけだったのに、今では「あ、こういう意図でつくられているんだな」と理解できます。自分でも大きな変化だと思います。

FMHR 野崎 思考を可視化することで、見えてくるものも増えますよね。「一言で言うとどういうことか」「具体的には何か」という整理の仕方は、上司から部下へのコミュニケーションにおいても大切なこと。今後のマネジメントにも活用できるかもしれませんね。

FMHR 堀井 受講された20名は、年齢も部署もさまざま。個別フィードバックという形だったからこそ、それぞれの課題と向き合っていただけた。お二人の話を伺って、1on1にこだわってご提案させていただいて良かったな、と安心しました。島さんから「共通言語に」というお話がありましたが、石井さんをはじめ受講者の方々から他の社員の方々へ、研修の成果が伝わっていくといいですね。

学びを共有する文化や風土を醸成していきたいなと思っています。今回の研修は、私たち人事部門が若手のリーダー層20名と話す貴重な機会にもなりましたし、彼らがどんな課題を抱えているかを知ることもできました。いろいろな意味で収穫の多い研修になったと思います。

*内容およびプロフィールは取材当時のものです