CASE

株式会社リーガルコーポレーション

“問い”で受講者の意識を変革。次期リーダー層が中計策定に挑む!

“外”は大変なことになっていると実感してほしかった

人事部 部長

青木 英樹

この盛り上がりが広がれば会社も変わっていくのではないか

人事部 能力開発課 課長

中谷 孝

自分たちの前提を疑ってみるという気づきを与えた

人事部 人事課

山瀧 剛

紳士靴業界で強大なブランド力を誇る「REGAL」だが、同社人事部の危機感は強い。 これからの厳しい時代を乗り切るためには、次期リーダーの育成が不可欠――。 FMHRとともに実施した研修で受講者に起きた変化、成長のプロセスを振り返る。

40代・非管理職から選抜 研修ゴールは「中計策定」

FMHR 金子 2019年、次世代リーダーの育成を目的とした研修プログラムを実施させていただきました。御社ではそれ以前にも、同種の研修を行われていたそうですね。

山瀧 企画自体が立ち上がったのは1年以上前でした。Webラーニングの受講者募集、学習成果を測るテストの実施、さらに成績上位者の中でリーダー研修を受ける意思がある人に手を挙げてもらいました。選抜の対象は40代中心の非管理職。初回は「新規事業提案」をテーマにした研修を行い、FMHRさんにご協力いただいたのは2回目に当たります。

青木 昔、山田さんが講師を務められていたセミナーに私が参加したことがあって。そこで意気投合して以来、いろいろと相談に乗っていただいてきました。弊社のことも深く理解されていますし、FMHRさんにお願いしよう、と。

FMHR 金子 私たちが担当した際の研修テーマは「中期経営計画の策定」でした。前回より視座が高いテーマを設定されたのは、どのような経緯だったのでしょうか。

青木 弊社は1902年の創業。軍靴の生産が原点で、かつては国から自動的に注文が入るような会社でした。そうした歴史的背景に加え、50年以上にわたって紳士靴業界で確立されてきたブランド力もあるがゆえに、今なお企業風土としては保守的で内向きなところがあるんです。でも、次世代をリーダーとして担う層には“外”は大変なことになっているんだと実感してほしかったし、先を見据えて、自分たちは何をしなければいけないのかと考えられるまでに意識を高めてほしかった。そうした目的に照らして、外部環境、内部環境の分析から始まる中計の策定というテーマ設定に至りました。

FMHR 金子 なるほど。中計の発表まで含め全6回の研修でしたが、1回目のころを思い返すと、確かに受講者の方たち自身が知っている領域の中だけに視点がとどまっているような印象も受けました。

青木 それが回を重ねるごとに変わっていきましたよね。受講者はもともと自ら手を挙げて参加したわけですし、導火線に火がつき始めていた人たち。研修を通して、その火が大きくなっていったのではないかと思います。

山瀧 印象的だったのは、ある受講者の「国内に工場があるのが自社の強みだ」という発言に対して、山田さんが「それって本当に強みなんですか?」と問いかけられたこと。自分たちの前提をまず疑ってみるという気づきを与えた、いい問いかけだったなと思います。 山田 前半の段階で私が変えたかったのは2点あったんです。1つは、受講者の言動から垣間見えた「自分はちゃんとやるべきことをやっている。ただ会社が動いてくれない」といったスタンス。もう1つが、自身の経験のみに基づいて、自分たちに都合のいいように物事を捉えがちな認識のあり方です。だからこそ、「本当にそうなんですか?」という問いかけが自然と多くなりましたね。

FMHR 山田 前半の段階で私が変えたかったのは2点あったんです。1つは、受講者の言動から垣間見えた「自分はちゃんとやるべきことをやっている。ただ会社が動いてくれない」といったスタンス。もう1つが、自身の経験のみに基づいて、自分たちに都合のいいように物事を捉えがちな認識のあり方です。だからこそ、「本当にそうなんですか?」という問いかけが自然と多くなりましたね。

受講者に託したチーム編成 そこに隠された狙いとは

FMHR 金子 後半の3回は戦略設計のパートに入っていきました。その際、15名の受講者に、いくつかのチームに分かれていただきました。

FMHR 山田 通例では、こちら側が核になる人を選んだうえで円滑に回るようなチーム分けをすることが多いですが、今回は「1人のチームはつくらない」というルールだけを設けて、あとは受講者自身にチーム編成を託しました。人材の偏りが生まれてしまうリスクは覚悟のうえで、お互いに自己評価し合って、限られた人的リソースを最大限活用するにはどうしたらいいかを自分たちで考えてほしかった。それも経営の一種の疑似体験ですし、重要なステップだと思ったんです。

青木 私ども人事も「自律的人材が大事だ」と言いながら、具体的に議論する機会はなかなかありませんでしたので、ちょうどいいチャンスだと捉えてご提案を受け入れました。どうなるかドキドキでしたが、バランスよく3つのチームが編成できていました。

FMHR 金子 その後の各チームの取り組み方をどのようにご覧になっていましたか。

中谷 異なる部署から集まっていたにもかかわらず、うまく連携をとりながら進めている様子でした。ランチミーティングを行うなど、かなり時間もかけていましたね。後半になればなるほど議論が活発化していき、「こういう盛り上がりが広がれば会社も変わっていくのではないか」と感じながら見ていました。

FMHR 金子 本当に皆さん、熱心でしたよね。山田がホワイトボードに書き込みながら話をしていると、その前に集まってこられて人垣ができていた。研修に真摯な姿勢で取り組まれていた姿は印象に残っています。

FMHR 山田 最初は発言する人が限られていましたが、後半は誰もが積極的に意見を言うようになりました。私もあえて、かなり挑戦的な返しをしていましたから。

青木 もともと「どんどん突っ込んでいってください」とお願いしていましたし、「いいぞ、もっとやってくれ」と思いながら議論の様子を見ていました。社内の人間だけでは遠慮もあって議論が深まりにくい面があるので、お任せしてよかったなと思います。

山瀧 よりよい戦略をつくりたいという意欲がこれまでになく強く感じられる研修でしたね。期限が来たから仕方なく提出するといった姿勢ではなく、途中の段階からFMHRさんにチェックをお願いしたいというリクエストも出てきた。金子さんには所定の研修以外でも2度ほどご来社いただきました。

FMHR 山田 いつの間にか、受講者の方から「金子先生」と呼んでいただけていた。それくらい頼られる存在になっていたのは、私も見ていてうれしかったです。

FMHR 金子 当然のことながら「何かできることはないか」と常に考えて取り組ませていただきました。後半になるにつれてM&Aや業務提携、プラットフォーム化といったテーマにまで踏み込むようになってこられたのは、大きな変化を感じました。

FMHR 山田 確かに当初の案は、まだまだ自分たちの領域をはみ出ていないというか、すぐにでもできそうなものが目につきましたね。後半は、これまでの延長線上ではない、いい意味で断絶した発想が出てくるようになりました。

発表資料は社内に公開 他部署においても有効活用

青木 プレゼン資料を見返してみると、「よくできているな」とあらためて思います。役員を前にしての発表の流れもスムーズでした。プレゼンを機に会社を動かすところまではいきませんでしたが、受講者だったメンバーは今でも「実現したい」という思いを持っています。今後、社として新しい事業の創出などに動き出す時が来たら、一から検討を始めるのではなく「もうありますよ」と言える。特に外部環境・内部環境分析のところなどは十分に有効活用できるはずです。

中谷 プロジェクトで作成した資料は社内に公開されていて、他部署からは「実際の施策を行ううえで参考にしている」という話も入ってきています。社全体にいい影響を与えられたのかなと思いますし、研修で盛り上がった機運を止めないようにしたいですね。

山瀧 あらためて当時の受講者に聞くと、「他部署との連携を意識し、全社的な視点を持てるようになった」「優先度を順位付けし、思いきって捨てるべきものを見定める取捨選択の大事さを学べた」「自分でつくった戦略を実現に近づけるために、今の立場でできることを考えながら行動している」と話していました。そうした言葉に触れ、経営視点を養えた研修になったなと成果を実感しています。

FMHR 山田 最後の発表のあと、受講者の方が「これで終わりにするのはもったいない」と仰ったことが印象的でした。提案が会社を動かすまでに至らなかったとしても、「じゃあどうすればいいのか」と考えられるようになったでしょうし、受講者の心の中に次期リーダーとしての種を植えつけるという目的は果たせたのではないかと思います。

※内容およびプロフィールは取材当時のものです