CASE

カルビー株式会社

“中期経営計画”の策定に挑戦!真剣勝負の研修で得た収穫とは

意識や行動が変化したことに本当に大きな価値がある

人事総務本部 人財・組織開発課

武田 克彦

大手菓子メーカーのカルビーから選び抜かれた12人の幹部候補生たち。リーダーの適性を問われつつ、経営スキルを磨いた半年間の研修を経て、彼らにどんな変化が起きたのか。伴走した2人が意見を交わした。

12名を対象に幹部研修を実施当初は戸惑うメンバーも

FMHR 山田 カルビー様は昨年(2018年)、FMHRをパートナーに、幹部選抜研修プロジェクトを半年間にわたって実施されました。そもそも、カルビー様がそうしたプロジェクトを導入しようと考えた背景は何だったのでしょうか?

武田 弊社はここ10年ほどの間で急成長を果たしました。現経営陣がリーダーシップを発揮してきたわけですが、その一方で、次世代の経営を担える中堅クラスの人材をきちんと育成できていないのではないかという問題意識があり、実効性のある研修に関心があったんです。

FMHR 山田 いろいろな研修会社があるなかでFMHRを選んでいただけたのは、どんな理由だったのでしょう?

武田 次世代リーダー育成に対する御社の意気込みや思想に共鳴したことが1つ目の理由です。また、研修ではどうしても講師と受講生の間に距離ができてしまいがちですが、FMHRは受講者の一人ひとりに寄り添って、いわば面倒を見てくれるのではないかという期待感があったことも決め手の1つになりました。

FMHR 山田 ありがとうございます。本音を申し上げると、カルビー様のような大企業の、しかも選抜されたメンバー12名が対象ということで、私たちもプレッシャーを感じていました。

武田 そうは見えませんでしたよ(笑)。今回のプロジェクトでは、あえて欲張って、2つの目的を設けました。まず、一人ひとりのマネジメント能力を向上させること。360度フィードバックなどを通して、自分が上司や部下、同僚からどう見られているのかを知るところから始まり、この先どう歩んでいくべきかの道筋をつけるところまでできたらいいな、と。もう1つは、経営幹部になるうえで不可欠な、分析などのスキルを身につけさせること。分析するだけでは意味がないので、12人を3グループに分け、各グループに彼らなりのカルビーの中期経営計画をつくってもらうことをゴールに設定しました。

FMHR 山田 中期経営計画の策定をメインストリームとし、それと並行してリーダーとしての行動改善を進めていく「実践×個別フィードバック」という形でしたね。実際にやってみて、いかがでしたか? ぜひ、率直な感想を教えてください。

武田 プロジェクトに参加したメンバーは30代半ばから40代半ば、課長から部長クラスの12人。それぞれ、過去に幹部研修を受けるなどして、自分が会社から期待を懸けられていることは何となく感じていたと思いますが、会社から選び抜かれたメンバーとして集められた形の研修は今回が初めて。そういう面では、戸惑いを感じながらのスタートでした。自分に欠けている部分などをかなり具体的にワンオンワンで指摘してもらい、行動計画表をつくり、そういうプロセスを経ながら軌道に乗っていきました。中期経営計画づくりに関しても、FMHRのコンサルタントの方々が各グループに入り込んで、本当に親身になって相談に乗ってくださった。受講生はすごく大きな学びがあったと思いますし、十分な成果が得られたと感じています。

FMHR 山田 中期経営計画づくりに関わらせていただきながら皆さんの声を聞いていると、過去の研修などでいろいろなケーススタディに取り組んできたものの、「自社をテーマにしてここまで深く考えたことがなかった」と仰るんですね。そこはすごく意外だなと感じました。ケーススタディをすると分かったような気にはなるけど、それだけですぐに自社のことに考えが及ぶわけではないんだな、と。

人事は経営の伴走者育てるべき人材の見極めを

FMHR 山田 プロジェクトを経て得られた成果や効果とは、具体的にはどんなことでしょうか。

武田 やはりマネジメント能力の向上という部分が大きいと思います。部下指導の面で、自分はできていると思っていたことが、部下から見るとそうではなかった。たとえば対話不足という課題が明らかになって、ちょっとショックを受けている人もいました。でも、それにめげずに、新しい自分なりのコミュニケーションの仕方を見つけたりしながら課題に向き合ってくれた。マネジメント能力の向上が見られたこと、そういう意識や行動に変化が見られたことは本当に大きな価値があると思っています。

FMHR 山田 部下から取ったアンケートで「どういう人なのかよく分からない」と、辛口に書かれている方もいましたよね。するとその方は部下向けにメルマガを書き始めた。仕事の話だけではなくて、自分の趣味も交えて書いていたそうですけど、おもしろい取り組みだなと思いました。それと印象的だったのは、半年間の研修も終わりに近づいたころ、帰りがけのエレベーターホールで、武田さんが「ちょっと変わってきましたね」と仰ってくださったこと。私たちにとっては苦労が報われた瞬間というか、すごくうれしかったですね。一方で、何かしら課題もお感じになったのではないかと思います。

武田 あれ以上のものは望めなかったとお世辞抜きに思います。課題を挙げるとすれば、そうやって12人に視野を広げさせる機会を与えたからには、それに応じたキャリアパスを用意して、新しい業務にチャレンジさせることを人事としてはしたかったなと。研修は昨年秋に終わることが分かっていたわけで、じゃあ今年度はこちらの部署に移って、新たなスキルを発揮してもらおうとか、戦略的に取り組めたはずなのにできなかった。どうしても、会社全体の将来より、貴重な人材を失いたくないという部署単位の思考のほうが勝ってしまうところがまだあります。これは研修というより、会社としての課題だと思いますけれども。

FMHR 山田 研修が終わった後のキャリアをどう踏ませていくかという点は、選抜教育を行っている多くの会社に共通する悩みだと思います。そこまで設計しながら研修を行えればさらにいいものになるでしょうし、私たちとしても今後に生かしていきたいと思います。

人事は経営の伴走者育てるべき人材の見極めを

FMHR 山田 プロジェクトの期間中、「私もメンバーの最後の一人なんだ」という意識で関わらせていただきました。今になって思うと冷や汗が出てくるぐらいのことを言ってましたよね。

武田 キャッシュがあるのに戦略投資に積極的ではない弊社を指して「タンス預金しているお年寄りみたいだ」と表現されたことはよく覚えています(笑)。でも、それはありがたかったですよ。それぐらいの刺激をもらえないとお金を払う意味がありませんし、第三者からの苦言をきちんと耳に入れることはすごく重要なことだと思いますから。

FMHR 山田 踏み込んだお節介な意見を言わないと、私たちとしてもご一緒している意味がないですし、予定調和で終わらせたくないんです。言ったからには、それに見合ったアドバイスをしなければいけないので、常に真剣勝負でした。 武田さんや受講生の皆さんが、それを許容して、前向きに捉えていただけたことには本当に感謝しています。最後に、武田さんは人材育成や教育において最も重要なことは何だとお考えですか?

武田 会社にとって教育は投資です。そういう意味では、投資した分を返してくれる人をきちんと見極めることが大切なのではないかと思っています。いろいろな意見があるところだとは思いますが。

FMHR 山田 社員みんなに満遍なく研修を受けさせることの意義ももちろんあるとは思いますが、武田さんの仰るようにある種のコストパフォーマンスの追求、総花的ではなく局所的な人材への投資という思想には私も共感します。

武田 人事は経営の伴走者という位置づけだと私は考えています。成長戦略やコストリダクション、あるいはイノベーションを実現できる人材を育てることが、その目的に適っている。育てるべき人にコストを集中させる。それが、企業の人材育成のあるべき姿ではないでしょうか。

※内容およびプロフィールは取材当時のものです